沖縄   第66号

通信

生物学会    2000年11月20日

*****沖縄生物学会の現状と展望*****

沖縄生物学会会長 新屋敷文春

 琉球生物学会として1950年代末に発足した沖縄生物学会は,今年で40余年経たことになります。本学会は来年創設37年目に当たり,名実ともにより一層の充実とミレニアムという転換の時期になりました。この間,沖縄生物学会は南西諸島生物相の生態や系統分類等の分野で多年の年月と多数の研究者によって貴重な論文や学術的資料が報告されました。これらの業績は国内はもとより国際的に高く評価されたものも少なからず,琉球弧を源泉とした研究分野は今日,亜熱帯及び熱帯生物圏生物相の研究地として広く知られるようになった。先だって公表された国際サンゴ礁学会の会議が本県で開催されることなど本県の学術的重要性を如実に示すものの一つです。これらの快挙は沖縄生物学会と無縁のものと位置づけたくないものです。
 さた,90年代に入って分子下レベルの生物学は,遺伝子解析を根底に進化生物学や分子生物学の範疇の中で様々な形で体系化されつつあります。アミノ酸レベルや遺伝子解析を基本にした系統分類学や生態学への応用とアプローチは益々その速度を加速させています。琉大熱帯生物圏研究センターや理学部進化生態講座の業績は,南西諸島生物相を分子レベルで考察するまでに達したと思われる。沖縄生物学会は転換期に際して,分子レベルでみる南西諸島の生物相と題してシンポジウムが開催されることに大きな期待を寄せるものです。
 一方,転換期の沖縄生物学会の憂慮すべきことの一つは,年々学会への参加者が減少していくことです。既存する沖縄生物教育研究会や沖縄理科教育研究会とは異質になることは学術学会の特質ですが,本学会の本質は,学会発足以来沖縄の自然を貴重のものと位置付け,そこで営まれる生物現象のすべてを究める目的で発足したものでした。本学会の評価の一端は前述したとおりだが,これは偏に本県が研究の場として,絶好の研究条件として他に類を見ない理想的な環境に恵まれたためでした。研究者はもとより学部卒業後,教壇(生物教育)に立つ者にとって本県の立地と本学会の存在は得難いものの一つでした。沖縄生物学会の発展に改めて期待を大きくするものです。
 経済開発の進展に伴う自然環境の保全は,益々その均衡を失い続けています。ヘリ基地移設に起因した諸々の環境破壊は,手だての打てぬ間に中城湾の埋め立て建設と目まぐるしく悪変し本学会にとっても深刻な問題となりました。また永年渇望し続けた自然史博物館の建立は二世紀に亘る事業になりました。遅々として進展しない現状を考える時,今後は県下の複数の文化団体と併合した組織体として,その実現に向けてより精力的な活動を試みることも一考に値するものと思います。
 会長を就任するにあたって,本学会の抱えるいくつかの問題点を集約しましたが,多様化する教育環境そして深化し続ける学術環境の中で沖縄生物学会のあり方を模索する契機にしたいことと,本会の益々の発展を確固たるものにすべく記した次第です。会員の稔り多い学究生活を祈念して就任の挨拶とします。


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沖縄生物学会第38回大会のご案内
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沖縄生物学会の第38回大会を下記の要領で開催いたします。今回は会場が従来の琉球大学から沖縄国際大学に変わっています。一般講演,自由集会,懇親会を予定しています。自由集会の企画がありましたら,下記の準備委員会までご連絡下さい。多数の方のご参加をお待ち申し上げております。

     会期   2001年5月20日(日)
     会場   沖縄国際大学 5号館2階 230号教室

5月20日(日) 受付 9:00〜 5号館1階ロビー
  一般講演(自由集会含む) 9:30〜12:00 203号室
  総会 13:00〜14:00 204号室
  一般講演  14:00〜16:00 203室
  シンポジウム 16:15〜18:00 204室
  懇親会  18:30〜20:00 203室

講演申込

 一般講演を希望される方は,講演要旨を次頁の要領でまとめ,2001年4月30日(必着)までに下記の準備委員会にお送り下さい。2001年5月上旬 発刊予定の沖縄生物学会通信第67号にプログラムを掲載するため,締め切りを厳守するようお願いいたします。講演には35mm版のスライド,OHPが使用可能です。それ以外の設備を必要とする方は,予めお問い合わせ下さい。一般講演の講演時間は,質疑を含め15分(講演12分,質疑3分)です。会員の皆様の日頃の研究成果を発表する場として積極的に御参加くださるようお願いいたします。


自由集会 

自由集会のご計画がありましたら,事務局までご連絡下さい。

シンポジウム 

シンポジウムとしては,現在大きな問題となっているマングースやイタチなどの帰化動物の現状,あるいは分子下レベルで見た沖縄の生物相などのテーマが提案されています。このほかにシンポジウムのテーマに関してご意見,ご提案がありましたら,事務局までご連絡ください。シンポジウムの最終的なテーマは,今後事務局で検討した後,次回の通信でお知らせする予定です。充実した魅力ある内容にするよう努力いたしますのでご期待ください。


連 絡 先

〒903-0213 沖縄県中頭郡西原町字千原1番地
         琉球大学理学部海洋自然科学科生物系事務室内
         沖縄生物学会第38回大会準備委員会
         TEL(098)895-8577 FAX(098)985-8576

講演要旨の書き方

用紙サイズはA4版とし,周囲縦横,約2cmは余白とします。1行文字数は全角45文字(半角90文字),行数は40行を目安とします。手書きの方も同じ要領でA4版の紙に清書して下さい。原則として図表は講演要旨の中では用いないように配慮して下さい。なお,原稿はそのままB5版に縮小し,オフセット印刷します。

講演要旨の書き方

沖縄生物学会在庫図書販売について

 沖縄生物学会通信第65号でお知らせした在庫図書の販売は,会員各位の皆様の積極的なご協力を得て,予想を上回る結果となりました。購入を希望されたにもかかわらず,在庫切れ(完売)で多数の会員の方にご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。とりあえず手紙,E-mailでの購入希望受付は終了させていただきます。まだ,在庫のあるものもありますので,それらについては今後改めて販売のお知らせをさせていただく予定です。ご協力ありがとうございました。


沖縄生物学会役員一覧表

 沖縄生物学会の会長,副会長,監査員および評議員が下記のように選出され,前回の総会で承認されました。任期は2000年4月1日から2002年3月31日です。

会   長 新屋敷文春(沖縄国際大学)
副 会 長 仲宗根幸男(琉球大学・教育) 前泊豊光(真和志高校)
監 査 員 野村 洋(県教育庁文化課) 新元洋允(那覇市)
勝連盛輝(県衛生環境研)
評 議 員
大学関係  新垣裕治(名桜大学) 本原邦男(琉球大学)
研究機関 島袋新功(県栽培漁業センター) 当山昌直(県公文書館)
新垣則雄(県農業試験場)
行政機関 嵩原健二(県博物館) 新垣峯雄(総合事務局畜産課)
高校関係 新川百合子(浦添高等学校) 喜屋武敬子(豊見城南高等学校)
豊見山 元(前原高等学校) 上杉兼司(沖縄尚学高等学校)
中学校関係 安田いち子(石嶺中学校) 伊藤泰人(兼城中学校)
小学校関係 播磨保治 (天願小学校)

さらに以下の幹事,編集委員が会長によって委嘱されました。
庶務 上原 剛(琉球大学)  立原一憲(琉球大学)
会計 傳田哲郎(琉球大学)  
編集幹事  諸喜田茂充(琉球大学)  鹿谷法一(琉球大学)
編集委員 萩原秋男(琉球大学) 太田英利(琉球大学)
横田昌嗣(琉球大学) 山崎秀雄(琉球大学)


沖縄県生物学会賛助会員

本学会にご協力いただいている賛助会員は下記の通りです。

     株式会社 猪原商会沖縄営業所  所長    安次嶺 学
      〒900 那覇市久米1丁目7番10号  (098)868-6373
    株式会社 文教図書       代表取締役 仲田 清栄
      〒900 那覇市泉崎1丁目4番10号  (098)867-6220
    株式会社 森山商事       代表取締役 森山 紹政
      〒902 那覇市寄宮2丁目29番22号 (098)835-4056

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原稿募集のお知らせ *
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 沖縄生物学会誌 の原稿は随時受け付けております が,第39号の原稿の締切は2001年1月15日といたします。投稿予定の方は早めに編集委員会までお送り下さい。投稿規定が変更されました。学会誌第38号に掲載した新しい投稿規定を御参照下さい。
  なお,ワープロを用いて書かれた原稿についてはフロッピーも同時にお送りいただくと大変助かります。

原稿送付先:〒903-0213 沖縄県中頭郡西原町字千原1
  琉球大学理学部海洋自然科学科生物系内
           沖縄生物学会編集委員会
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沖縄生物学会
〒903-0213 沖縄県中 頭郡西原町字千原1番地
          琉球大学理学部海洋自然科学科生物系内
          生物系事務室 TEL:(098)895-8577
          上原 剛(098)895-8897,
          立原一憲(098)895-8556 FAX(098)895-8576

     振替口座 郵便:02030-8-30433 沖縄生物学会
             銀行:琉球銀行宜野湾支店 普通051-065沖縄生物学会


○第37回大会

2000年度沖縄生物学会(第37回)大会が,2000年5月21日(日)に琉球大学共通教育棟2号館において開催されました。参加会員数は約80名でした。一般講演は,口頭発表15題,ポスター発表1題の計16題でした。一般講演終了後,シンポジウム『沖縄島のジュゴンの生息環境』が開かれ,ジュゴン・ネットワークの細川太郎氏と香村眞徳氏による講演が行われました。公演後,沖縄の基地移転問題とそれに絡むジュゴンの生息場所の破壊の危惧について活発な討論が行われました。
 シンポジウム終了後,約40名の参加で懇親会が催され,会員相互の交流が図られました。

○第37回総会

 2000年5月21日(日)13:00から14:00に,琉球大学共通教育棟2号館202室にて,沖縄生物学会の第37回総会が開催されました。香村眞徳会長の挨拶の後,沖縄国際大学の新屋敷文春氏が新会長にとして承認されました。さらに副会長として琉球大学の仲宗根幸男氏と真和志高校の前泊豊光氏が承認され,その他の新役員が紹介されました。予定された報告事項や審議事項はいずれも審議の上,承認されました。議事は円滑に進められ,新屋敷新会長の挨拶で定刻に閉会しました。

 報告事項

  1. 上原剛総務幹事より,次の事項が報告されました。
        @ 学会通信64,65号の発刊,A 自然史博物館設立の推進
  2.  
  3. 鹿谷法一編集幹事より,学会誌第38刊の発行について報告がありました。
 審議事項
  1. 2000,2001年度の役員が改選され,評議委員会で選出された会長,副会長,監査員が承認されました。会員の中から評議員が選出されました。また,幹事,編集委員が会長から委嘱されました。
  2.  
  3. 1999年度決算報告および監査報告
       傳田哲郎会計幹事の決算報告および新本洋允監査員の監査報告があり,承認されました。
  4.  
  5. 2000年度事業計画
       上原剛総務幹事より,以下の事業計画が提案され,承認されました。
       @ 学会誌第39号の発行,A 学会通信第66,67号の発行,B自然史博物館設立の推進
  6.  
  7. 2000年度予算案
       傳田哲郎新会計幹事より,2000年度予算案が提案され,承認されました。

○評議委員会

 2000年11月7日に2000年度第1回評議委員会が開催され,以下の事項が報告,審議されました。

 報告事項  
  1. グリーンピースと香村前会長,新屋敷会長,上原総務幹事との懇談
  2.  
  3. 会員名簿の整理
  4.  
  5. 生物目録(昆虫) 
 審議事項  
  1. 沖縄生物学会第38回大会の開催地と日程について
  2.  
  3. 学会評価委員会の設置について
  4.  
  5. 自然史博物館実現のための具体的活動について

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