佐々木健志氏は、琉球大学の資料館の唯一の学芸員として生物、地学、民俗、考古まで幅広い分野に渡る貴重な資料の維持管理を行っている。氏の専門は生態学であるにもかかわらず、他分野にも造詣が深く、琉球大学の教員が収集された標本、首里城跡に琉大があった時に発掘された資料、沖縄から消えつつある民俗資料など、それぞれの価値を十分理解して保管・活用に務めている。また、無形の文化資料についても積極的に保護に取り組み、現在ほとんど残されていない琉球の藁算の保存にも大きく貢献している。
教育面では、資料館を活用して、大学生の博物館学芸員養成のための教育や大学への国内外からの来訪者に琉球の自然と文化についての普及啓発を行っている。さらに、小中学校からの見学にも積極的に対応し、出前授業や一般向けの観察会なども実施している。養護施設などの見学に対しても、さまざまな障害をもつ児童・生徒に応じた体験プログラムを実施している。全国の大学の博物館が研究や学内の教育に偏っているのに対して、対象を問わず地域に目を向けた教育をされている点は非常にユニークである。
研究面では、専門であるクモの研究にとどまらず、昆虫他の無脊椎動物から鳥類にいたるまで、さまざまな琉球列島の生物の生態学、分類学、生物地理学の分野で業績をあげている。氏の人柄と深い知識を慕う数多くの学生が資料館を訪れ、氏の指導のもとに研究を行っている。
氏は生物学の知識を生かして、地域社会へもさまざまな貢献をしている。現在作成中の沖縄県史では生物分野の委員長を務め、とりまとめに尽力している。沖縄県、あるいは国のさまざまな環境保全、稀少種保全に関わる委員会では委員として重要な役割を果たしている。特に、ヤンバルテナガコガネの保全においては、実地の野外調査資料に基づく貴重な提言をしている。
琉球列島の自然・文化資料の後世への伝承、自然環境教育、自然史研究、保全への貢献などあらゆる点において、池原貞雄記念賞にふさわしい。
小高信彦氏は主にキツツキ類を対象とした鳥類の生態学を専門としている。北海道大学で学位取得後、帯広畜産大、大阪市大を経て、環境省のやんばる野生生物保護センタ―の職員としてやんばるの自然の保護に携わり、その後も森林総合研究所九州支所の研究員として琉球列島の生き物の学術研究と保全を続けている。
小高氏は北海道で研究を始めたが、琉球列島の鳥類に強い興味を持ち、多くの成果をあげている。これまでにやんばるに関わる研究成果として、ノグチゲラに関する4編の学術論文、1冊の著書と11件の学会発表、アカヒゲに関する2編の学術論文と1編の学会発表、その他ヤンバルクイナ、カラスバト、アマミヤマシギ、アカショウビンなどやんばるの鳥類に関する学術論文を発表されている。やんばるの保全にも関心が深く、2編のマングースに関する学術論文、9編のやんばるの森林と希少種の保全に関する学会発表をしている。氏の興味は鳥類にとどまらず、近年のオキナワトゲネズミに関する新発見にも多大な貢献をした。
氏の研究に対する姿勢の優れた点は、地元の研究者、自然観察者、行政諸機関、NPOなどと連携して研究や活動を進めている点であり、それは氏が目指しているやんばる地域の保護の上でも大きなメリットとなっている。
学術研究のみならず、やんばるの鳥類や自然の素晴らしさ、またその保護に関する数多くの一般向けの著作がある。また、環境省、林野庁のやんばるの保全に関わる委員として調査、提言を行ない、一方ではやんばるの自然体験活動やツーリズム等の協会が主催する環境教育プログラムでも講師として指導に当たっている。沖縄生物学会においてもシンポジウムの演者やコーディネーターとして活躍している。
琉球列島、特にやんばる地域の野生生物の研究に関する成果、地元や行政機関と協力した保護活動、自然環境教育などあらゆる点において、池原貞雄記念賞にふさわしい人材である。
2011年9月4日に突然の事故で急逝された小倉剛氏は,琉球大学農学部准教授として、沖縄島に移入された外来哺乳類であるジャワマングースの根絶に向けた基礎及び応用的研究を幅広く実施してきた。
氏の研究は、日本に移入されたマングースの種同定、成長、食性、被害状況などを明らかにした基礎的研究から始まったが、これは日本における外来哺乳類の先駆的な生態学的研究となり、本邦初のマングースに関する氏の学位論文ともなった(名古屋大学から農学博士の学位を取得)。さらに、これらの研究成果をもとに、マングースの生態系への影響を把握するための広範な研究を展開し、具体的なマングースの駆除対策に向けた応用研究を進展させた。その成果は,行政(環境省と沖縄県)、企業、大学が、沖縄県の外来種対策を協働して推進する端緒となっただけでなく、ヤンバルクイナをはじめとする沖縄島北部の在来動物を保全するための大規模な保全対策であるマングース移動防止柵の設置と駆除事業へとつながり、ヤンバルクイナやケナガネズミの個体数が増加するなどの大きな成果を上げている。このことはまさに、「マングース対策事業を通して研究成果を地域社会に還元する」という氏の地域社会への貢献を念頭に置いた研究姿勢に拠るところが大きい。また、氏のこのような研究成果は、国内外の研究者にも高く評価されており、様々な分野の研究者が氏との共同研究を実施してきた。これらの研究活動が評価され、公益財団法人沖縄協会から「第31回(平成21年度)沖縄研究奨励賞」が授与された。また、最近では、これまでの研究成果を「日本の外来哺乳類〜管理戦略と生態系保全〜,東京大学出版会」にまとめている。今年度からは犬を使った探索技術開発や避妊ワクチン開発などの研究も開始しており、今後もマングース駆除に関する新たな技術開発が期待されていたところであった。
大学教育においては、氏の魅力的な研究活動と温厚な人柄にあこがれ、研究室の門を叩く学生も多く、氏の熱心な指導のもと、哺乳動物の研究者や自然保護行政に携わる多くの優秀な門下生を輩出している。
以上のように、小倉氏は琉球列島の貴重な生態系を保全する上で、また学生へ教育や人材育成においても多大な貢献をしたことから、池原貞雄記念賞にふさわしい人材であると考える。
藤田氏は、2002年3月に琉球大学理工学研究科において「ウミシダ類に共生するコシオリエビ類の初期生活史および共生生態」で博士の学位を取得した。卒業後は琉球大学21世紀COEプログラム博士研究員、NPO法人「海の自然史研究所」代表、琉球大学非常勤講師など、決して研究環境に恵まれていない状況にありながら、精力的に甲殻類の分類学、生態学に関する専門分野の研究を行ってきた。さらに、沖縄の水圏環境における無脊椎動物を対象とした、様々な教育・啓蒙活動にも積極的に行っている。また、宮古島固有種のミヤコサワガニの沖縄県天然記念物指定に大きな役割を果たし、地元の方々と協力して、生息地の保全にも尽力している。
研究業績は91 編の論文・著書・報告書を始め、新聞・雑誌等での連載・寄稿・記事、多数の学会発表など、合わせて286 件にのぼる。また、一般向けの講演や観察会・各種委員会活動などは114 件におよぶ。
沖縄生物学会では、ほぼ毎年年次大会で発表し、大会前に注目される研究発表として、新聞にも掲載されることもあるなど、一般市民に対する本学会の認知度の上昇にも大きく貢献している。また、沖縄生物学会誌にも8編の論文が掲載されており、投稿論文の査読などでも貢献している。
研究環境が恵まれていないにも係らず、多くの研究成果と、教育・啓蒙活動を行ない、沖縄生物学会にも多大な貢献をしており、将来の成果が期待される若手研究者であることから、沖縄生物学会池原貞雄記念賞に値する。
中村剛氏は維管束植物に関する分子系統地理学の専門家である。琉球大学大学院で「サツマイナモリ(アカネ科)の分子系統地理学的研究」で学位を取得し、琉球大学理学部などで博士研究員を務めた後、現在は台湾中央研究院生物多様性研究中心で博士研究員を務めている。
中村氏は、日本・琉球・台湾島弧を中心とした地域における維管束植物の系統地理学、分類学、生態学について研究を行っている。既に論文を25報公表しており、その内訳は琉球に関するもの14報、台湾に関するもの5報、琉球と台湾の両方に関するもの6報である。国内外での学会発表も36 件ある。主要な成果として、台湾固有属のタイヤルソウ属が、琉球・台湾島弧に産するサツマイナモリ属の種に系統的に近く、サツマイナモリ属に含まれることを示した研究や、琉球列島島嶼間の植物相の類似度から植物の分布に関わる要因を明らかにした研究などがあげられる。後者は、この地域の維管束植物相に関する解析の先駆けとなるものである。これら以外にも、日本・琉球・台湾島弧におけるサツマイナモリの遺伝的分化と分散過程について明らかにした研究や、琉球列島の固有種であるコケタンポポがオーストラリア起源であることを初めて分子系統学的に明らかにした研究などがある。コケタンポポに関する研究では分化過程と分岐年代の推定を行い、生物地理学上非常に興味深い成果をあげている。これらの成果は、この地域における維管束植物に関する研究としては最も詳細なもののひとつで、今後この地域の研究の先例となると思われる。また、氏は琉球列島の生態系の保全にも関心があり、北大東島に侵入した侵略的外来種センニンサボテンに関する論文の中で、生態系への悪影響について警鐘を鳴らすとともに、その防除法についても議論している。台湾中央研究院生物多様性研究中心に異動してからも、オニタビラコ属、シュウカイドウ属、シロダモ属など、琉球にも関わりの深い植物を用いて矢継ぎ早に多くの成果をあげている。これら一連の研究を評価され、2012年には日本植物分類学会奨励賞を受賞している。
沖縄生物学会については、沖縄生物学会誌に2報の論文を掲載している他、琉球大学在籍中には通常の大会や、四学会合同大会、日本植物分類学会との合同大会の際に大会運営に貢献した。
中村氏は単に室内での分子系統学的研究を行うばかりでなく、野外において植物を見いだす能力に長けており、豊富なフィールドワークに基づく植物に関する深い知識を備えている。今後、日本・琉球・台湾島弧ばかりでなく、周辺地域まで対象とした研究を将来にわたって活発に展開することが期待される。
これまでに得られた研究成果と活動内容から、池原貞雄記念賞にふさわしい人材である。
沖縄主物教育研究会は1952年11月14日に発足し、現在に至るまで継続的に活発に活動してきた。会員相互に情報交換を行い、生徒の自発的活動の啓発を行ってきた。数年から10年に1回は出版物も発刊し、会員はもとより一般の方からも支持を得てきた。
会員の情報交換の場として、1973年から現在まで毎年、宿泊研修会を開催してきた。研究会誌である「沖縄生物教育研究会誌」は、ほぼ毎年発行されており、長期にわたり生物教育に関する研究を行ってきている。
現場での教育活動としては、生徒の活動成果を発表する機会として、1954年に生物標本展示会を開催し(1957年に「高校生による生物科学展」と改称)、毎年開催している。1959年には、戦後初の開催となった日本生物教育会全国大会(特別大会)を沖縄県で開催した。1996年には、沖縄で初の九州生徒理科研究発表大会を開催し、2015年には九州高等学校理科教育研究会生徒理科研究発表大会(沖縄大会)を開催した。
さらに、教育実践だけでなく、出版物を発行することでより多くの人への啓発活動を行ってきている。1960年に「沖縄産植物目録」並びに「原色ポケット図鑑 沖縄の生物」、1976年には25周年記念出版物として、生態写真集「沖縄の生物」(通称青本)を発刊した。また、1984年に日本生物教育会全国大会(沖縄大会)の記念出版物として発刊した「沖縄の生物」(通称赤本)は沖縄の生物研究の総合学術書として多くの研究者に利用されている。1987年には沖縄タイムス誌に「沖縄四季の花木」を全会員で執筆し、翌年35周年記念出版物として発刊した。2003年には「フィールドガイド 沖縄の生きものたち」を出版した。また、高校生向けの「実験ノート」は毎年発行され、多くの高校の現場で活用されている。
これらの活動は、他機関からも高い評価を受けており、1964年には沖縄タイムス社の「教育賞」を受賞している。
以上のように沖縄生物教育研究会は、会員の相互研鑚の機会の設定、高校教育の向上によって沖縄の理科教育の発展に貢献してきた。また教育実践だけでなく、沖縄の自然観察への一助となる書籍の発行など、多くの活動を60年以上、継続して行ってきた。これらの長期にわたる活動は、池原貞雄記念賞にふさわしい。
奈良県出身の中西氏は、平成6年4月の琉球大学入学以降、活動の拠点を沖縄においている。卒業研究や大学院の研究ではイリオモテヤマネコの行動と社会構造の研究に取り組み、平成17年3月に博士(理学)を取得した。その後、琉球大学COEプログラムの博士研究員や琉球大学非常勤講師を務めながら一貫してイリオモテヤマネコやツシマヤマネコを中心に生態学的研究を進めてきた。現在は琉球大学ポスドク研究員として日夜研究を進めている。研究成果を着実に発表する傍ら、海外の大学との合同野外実習やワークショップにおいて、フィールド活動の指導者としても貢献している。また、台湾特有生物研究保育中心との共同研究をはじめ、国際的な研究者として活躍している。
これまでに、イリオモテヤマネコの行動や行動圏についてのフィールド研究をはじめ、長期間データに基づくイリオモテヤマネコの生態研究で高い評価を受けており、平成22年度には日本哺乳類学会奨励賞を受賞した。西表島全域におけるイリオモテヤマネコの生息状況や生息密度の推定、歯の年輸を用いたイリオモテヤマネコの齢査定方法の確立、胃内容物に基づく食性分析などの研究成果は、島嶼に生息する食肉目哺乳類の生態学において重要な知見を提供するだけではなく、絶滅が危倶されるイリオモテヤマネコの保全活動を策定する上でも有用な情報基盤となっている。近年はイリオモテヤマネコの感染症についても共同研究を行っている。西表島のアンプレラ種としても注目されるイリオモテヤマネコの保全を進めることで、西表島全体の生物多様性が維持・回復できることが期待されることから、これらの研究成果はイリオモテヤマネコ1種の保全のみならず、西表島の生物多様性保全に貢献するものである。
また、氏は平成21 年度より琉球大学が実施している教員免許状更新講習において「生物の多様性と保全」の講師を毎年担当し、しばしば誤解されることのある生物多様性や外来生物の問題を学校教員向けに講義している。本講習制度は学校教員の質的向上を目的とするものだが、受講した教員がそれぞれの教育現場で正しい保全の考え方を児童・生徒に教育することで、沖縄の自然保護に大きく貢献していると考えられる。
中西氏は文字通り「沖縄の自然とその保護に関し顕著な貢献が期待される研究」の担い手としてふさわしい研究者であり、池原貞雄記念賞に値する。
同法人は2004年8月1日にNPO法人「どうぶつたちの病院」として沖縄県うるま市に設立された。2006年からNPO法人「どうぶつたちの病院 沖縄」と名称を改訂して活動を継続した。
法人の活動は、広く沖縄の希少動物と生態系の保全をめざすもので、特に獣医学的な視点からの活動を行っている。多くのNPO法人が、沖縄を含む各地で自然環境あるいは希少種の保全に関わる活動を続けている中で、獣医師としての豊富な経験とスキルを持ち、かつ野生生物の治療や獣医学的知見についても見識を持った上で活動を行っている点が特徴的であり、全国のNPO法人の中でも他に類を見ない。その一方で、生態学や行動学の研究者、行政の担当者、法律や経済の専門家とも積極的に連携を取り、様々な視点からの議論に基づく活動を行っている。代表者は沖縄県出身であり、地域の事情も理解し、地元に密着した活動を行っている。
代表的な活動として、「ヤンバルクイナ保護プロジェクト−傷病個体のレスキューおよび飼育下繁殖」と「イリオモテヤマネコ保護プロジェクト−ノネコ対策」が挙げられる。前者については「ヤンバルクイナ救命救急センター」を独自に立ち上げ、その後は国頭3村、沖縄県、環境省と連携しつつ活動の内容を広げていった。現在はやんばるに環境省の飼育繁殖施設が設置されているが、この体制にいたるまでの基礎を作るとともに、引き続き施設の管理運営を行っている。また、やんばる及び西表島における外来種、特にノネコに関する対策を実施してきた。西表島においては獣医師が常駐し、ネコの適正飼育の指導を行うとともに、ノネコの捕獲・搬出、竹富町のネコの適正飼養に関する条例への助言などを続けてきた。その結果、西表島ではノネコが0となり、全国で唯一の成功例となった。
一方で、活動の中で得た情報の発信に務め、一般、小中学生、ペットの飼い主等への普及啓発活動を活発に行い、成果をおさめている。また、学術雑誌に13編の論文を発表し、学会で18件の研究発表を行うなど、資料の蓄積・公表にも努め、保全生物学分野で学術研究にも寄与している。
1979年から37年にわたり、県立高校の教諭、教育行政職等に従事しながら、高校生の生物研究活動等の指導や、沖縄県の自然環境教育プログラムの提供、地域自然の教育普及活動に努めた。特に、沖縄生物教育研究会発行の「フィールドガイド沖縄の生きものたち」の刊行において中心的役割を果たしたこと、ノグチゲラの保護増殖事業への協力、「蝶を指標とした環境診断」の開発と地域の自然に関する環境教育活動は高く評価される。安座間安史氏の沖縄の自然、環境教育に対する長年の取り組みや貢献は、沖縄生物学会として池原貞雄記念賞を授与するにふさわしいと認められた。
1970年の開園以来、動物と人々との交流をとおして、地域の自然保護や環境教育の普及に努めてきた。とりわけ、傷病野生鳥獣類の保護・治療は、イリオモテヤマネコをはじめとする本県の貴重野生生物をも取り扱い、その飼育技術や繁殖技法の蓄積に努めるとともに、獣医学的知見の集積も図ってきた。また、ケラマジカやカンムリワシなどを対象とした野生生物の管理・保全研究の実施など、長年の沖縄の自然環境保護に対する取り組みや貢献は、沖縄生物学会として池原貞雄記念賞を授与するにふさわしいと認められた。
2006年から東海大学沖縄地域研究センター(西表島上原)に技術職員として勤務し、そこで長年にわたり、学術報告誌『西表島研究』の編集、発行についても尽力してきており、海鳥、サンゴ、ウミガメ、オカヤドカリなどの自身の研究成果を発表してきた。近年は、カンムリワシ個体群を対象とした森林および里山環境の利用に関する研究に着手している。現地に居住しながら、対象動物を研究するとともに、そこに生息するさまざまな関連生物の状況や環境を調査、記録していくことは、沖縄における島嶼生物学の基礎形成と発展において欠かせず、得られた資料は貴重である。同センター退職後には西表島においてNPOを立ち上げ、同様の活動を継続的に行っており、今後も更なる成果が期待される。水谷晃氏の西表島を中心とする長年の研究は、池原貞雄記念賞を授与するにふさわしいと認められた。
【選考理由】
@ 沖縄県教育庁文化財保護指導員や林野庁九州森林管理局自然保護管理員などを長年にわたって務めているほか、国や県などが行ってきたやんばる地区の様々な調査活動にも積極的に協力し、当該地域の自然環境の保全や野生生物の保護に貢献してきた。
A やんばる地区で活動するNPO等の代表理事や顧問として指導的役割を担うとともに、これら団体の活動を通して、トラスト運動の普及、地域の環境教育や人材育成、エコツーリズムの推進等に貢献した。
B 本業であるカメラマンとして、やんばるの自然をテーマとした写真集の出版や各種メディアによる番組作成にも協力し、やんばる地区の自然保護に関する啓発活動に貢献した。
C 研究者と連携し、トゲネズミ、ケナガネズミ、ノグチゲラなどの希少生物の保全に関する調査研究に携わるだけでなく、自らも野外データの収集などを行い、それらの成果を学術論文として公表した。
D 平成12年度に「自然環境功労者国務大臣環境庁長官表彰(環境保全個人部門)」を受賞した。
以上のように、久将和氏の長年にわたる活動は、やんばる地区の自然環境の保全、希少野生生物の保護、人材育成、エコツーリズムの推進等に顕著な貢献を果たしたことから、池原貞雄記念賞を授与するにふさわしいと認められた。