ダニ輸入大国日本〜目にも留まらぬ小さなインベーダーたち〜
五箇公一(国立環境研究所・侵入生物研究チーム)


  ダニ類は,その多くが体長1mmに満たない微小な生物であるが,様々な環境に適応し,この地球上で最も繁栄している生物の一つと考えられる。その中には寄生生活を送るものもあり,その宿主範囲は植物や動物など様々な生物種にまたがる。これらの寄生性ダニは,本来の生息地においては,長きに渡る共進化プロセスを経ているため,宿主生物や生態系に大きなダメージを与えることは少ない。しかし,環境撹乱や人為移送により,それまでの寄生生物-宿主-生態系というシステムに攪乱が生じたとき,この小さな生物は突如「大害虫」と化す。特に近年における資材・ペット目的での生物移送は,寄生性ダニの分布拡大をもたらし,生態系および人間生活に深刻な影響を与える恐れがある。しかし,その大きさ故に,その存在はほとんど認知されておらず,リスクは人知れず「浸透」している。本講演では,輸入植物,輸入昆虫,輸入爬虫類等とともに日本に持ち込まれている寄生性ダニの知られざる実態と生態リスクについて,実証データを交えて紹介する。(図はクワガタムシに寄生するダニのCG)
クワガタムシに寄生するダニのCG