6

海洋博公園内におけるヤシガニ Birgus latro の生息実態
*松崎章平・佐藤由紀子・戸田 実(沖縄美ら海水族館)


  ヤシガニBirgus latroはオカヤドカリ科に属し,陸上生活する甲殻類の中では最大種で,インド・太平洋の熱帯・亜熱帯島嶼に分布し,国内では南西諸島のみに生息する。環境省及び沖縄県のレッドデータブックではVU(絶滅危惧U類),IUCNではDD(情報不足)である。
 沖縄美ら海水族館がある海洋博公園内でヤシガニが確認され,その生息実態調査を実施した。当公園は1975年開園した,本部半島先端の海岸線約3km,面積約77haの国営公園である。
平成18年7〜9月の夜間に計14回,公園内をルートセンサス法で調査した。確認したヤシガニは,甲長,甲幅,体重,性別及び写真記録を行い,個体識別のためペンキで甲に番号を付け捕獲場所で放流した。
 今回の調査では,計50個体(雄24個体,雌26個体)のヤシガニを確認し,再捕は2個体であった。8月に22個体を確認(最多)し,体重ごとの組成は,99g以下1個体,100〜199g 21個体,200〜1289g(最大)は28個体であった。700g以上の7個体は全て雄で,抱卵雌は確認されなかった。発見時の摂餌物は,アダンPandanus tectorius,オキナワキョウチクトウCerbera manghasの果実であった。
 本調査では,ヤシガニ前甲の模様を写真に撮り,この模様により個体識別が可能かどうかの調査も行った。その結果,50個体全てがこの模様による個体識別が出来た。現在,ヤシガニを飼育し脱皮等により,この模様がどのように変化するか観察中である。 現在国内で,これほど多くのヤシガニが確認されるのは稀な事例と思われる。この公園の自然環境がヤシガニの成育に適していた事と,公園として管理されていた事等により,これだけの自然群が保存されていたと推測された。