沖縄   第79号

通信

生物学会    2007年4月27日

追悼 故 池原貞雄先生

池原貞雄先生との思い出
沖縄県公文書館 当山昌直

 リュックをおろすとまず一服。そして黒砂糖。ここはやんばるの山の中。ついさきほどまでは、薄暗くなった山の中を懐中電灯の明かりをたよりに草木をかき分けながら歩いていた。先頭は、池原貞雄先生。探検帽と煙草と黒砂糖、これだけそろえば先生は無敵になる。山あるきに慣れてない学生には「だいじょうぶか」と笑いながら声をかける。その笑ったときの顔が今でもよみがえってくる。
 私は1970年代前半から先生のやんばる調査に同行していた。与那覇岳の北側では、木材を満載したGMの大型トラックが幾度となくうなり声をあげながら谷底から上がってくる。背後の山々はすでに皆伐状態であった。先生はこのように変わりゆくやんばるの姿をみていた。時に熱い口調でやんばるの自然の重要性を訴えたものの、多くは語らなかった。先生の心中は察するにあまりあった。
 学生当時の私は、やはり先生の後ろ姿から大きな影響をうけたかもしれない。先生は、私(たち)にときどきシロアリ研究の話もしてくれた。私が強く印象に残ったのは、先生が学位論文を書くために調査したトカラ列島の話。当時、トカラ列島は非常に不便なところで、目的の島に船が着く頃は、外は真っ暗になっていた。船が島に近づくと暗い島上部でたいまつの明かりが点々とともり、やがて列をつくって降りてきてハシケで海の上から迎えにきたという。先生に刺激されたのだろうか、私は卒論でトカラを始め屋久島から与那国島まで、島から島へとトカゲを求めて渡りあるくことになった。
 やんばるの他にもいろいろな島へ同行している。忘れられないものの一つに奄美大島におけるWWFJの調査がある。1988年8月に行われたこの調査では、先生と二人で湯湾岳の公園に一週間もテントをはり、島内を車でまわった。山の上は夏でも夜になるとひんやりとしておりテント生活は快適であった。公園のヨモギをインスタントラーメンに入れて二人で夕食を食べていると、近くにアマミヤマシギが降りてくる。夜の林道にはアマミノクロウサギも出てくる。朝になるとルリカケスやオーストンオオアカゲラが飛んでくる。夢のような一週間であった。ここではいくつかの失敗談もあり、あとで思い出して一緒に笑ったりした。
 このような調査の思い出を別にしても、先生の存在は大きかった。中でも沖縄を取り巻くさまざまな自然環境問題。何かあるときは、いつでも先生が第一線にいた。先生にお願いしたり、相談したり、振り返ると先生がいるので心強かった。ところが、最近になって体調を崩され、先生は第一線から遠のいてしまった。先生の抜けた穴はあまりにも大きい。いまさらながら思い知らされる。しかし、そんなことをいっていると先生に叱られそうだ。「しっかりやりなさい」と先生はいうだろう。
  先生、長い間、第一線におられて休まる日がなかったと思います。本当にご苦労さまでした。あとは私たちに任せてゆっくり休んでください。私たちの記憶の中では先生は今でも健在です。これからも私たちと一緒にやんばるや沖縄、そして琉球の島々をかけめぐりましょう。


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沖縄生物学会第44回大会の開催のお知らせと講演プログラム
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日時:2006年5月26日(土)
場所:沖縄国際大学 5号館 107講義室

 沖縄生物学会第44回大会が宜野湾市の沖縄国際大学において下記の日程で開催されます。14題の一般講演とポスター講演が1題,小学生のポスター発表2題の合計17題の講演があります。このほかに、去る4月14日(土)に逝去された沖縄の生物研究の礎を築かれた、故池原貞雄先生を偲ぶ展示もございます。また,同日午後1時から沖縄生物学会の第44回総会も開かれます。会員の皆様の積極的なご参加をお待ちしております。

 さらに,午後3時30分から7号館2階の201講義室を会場として,公開シンポジウム「外来種法の盲点:見えない脅威と琉球列島の生物多様性(代表:伊澤 雅子),琉球大学21世紀COEプログラム共催」を開催予定です。ふるってご参加下さい。


 大会日程

5月26日(土) 受付 8:15〜 5号館1階入口
  一般講演 9:00〜11:30 5号館107講義室
  ポスター講演 11:30〜12:00 5号館1階ホール
  休憩(昼食) 12:00〜13:00  
  総会 13:00〜14:00 5号館107講義室
  一般講演 14:00〜15:00 5号館107講義室
  シンポジウム 15:30〜18:30 7号館201講義室
  懇親会  19:00〜21:00 厚生会館4階ホール

休憩室 5号館1階106講義室 

79号地図

参加費用
大会参加費:1,500円 (学生 1,000円)
懇親会費:3,000円 (学生 1,500円)

プログラム

一般講演(5号館1階107講義室)【9:00〜11:30】
1. 9:00〜9:15 沖縄県の先島4島におけるケブカアカチャコガネ雄成虫の形態および体表ワックス比較
    秋野順治・平井剛夫・若村定男(農生研),*新垣則雄 (沖縄農研セ).
2. 9:15〜9:30 ニガウリの蕾も加害するランツボミタマバエとそれに寄生するハラビロクロバチ科2種の発見
    上地奈美(沖縄農研セ、日本学術振興会).
3. 9:30〜9:45 八重山諸島西表島で保護回収されたヒメクロウミツバメOceanodroma monorhis
    河野裕美・*水谷 晃(東海大・沖縄地域研究センター).
4. 9:45〜10:00 沖縄の立方クラゲ相に関する新知見
    *岩永節子・大城直雅・松田聖子・盛根信也(沖縄県衛生環境研究所),大場淳子(浦添市).
5. 10:00〜10:15 宮古島で見つかったヤシガニ小型個体とその生息環境
    藤田喜久(琉大・非常勤講師 / NPO法人 海の自然史研究所).
6. 10:15〜10:30 海洋博公園内におけるヤシガニ Birgus latro の生息実態
    *松崎章平,佐藤由紀子,戸田実(沖縄美ら海水族館).
7. 10:30〜10:45 タイ国リボン島周辺の海草藻場をジュゴンはいかに利用しているのか?
    *中西喜栄・細谷誠一(いであ梶j,荒井修亮(京都大学),Kanjana Adulyanukosol(Phuket Marine Biological Center).
8. 10:45〜11:00 リュウキュウアマモ(Cymodocea serrulata)の花と結実について
   

*野中圭介((財)港湾空港建設技術サービスセンター),與那覇健次(那覇港湾・空港整備事務所).

9. 11:00〜11:15 海藻の光合成を調べる中学校選択理科の実践例
    *飯田勇次(唐津市立西唐津中学校),市丸有里(玄海町立値賀中学校),黒河伸二(佐賀大学名誉教授).
10. 11:15〜11:30 南西諸島における生物多様性評価プロジェクトの目的と手法.GIS手法を用いた優先保全地域の抽出と生物多様性ビジョン作り.
    *安村茂樹・花輪伸一(WWFジャパン).
ポスター講演(5号館1階ホール)【11:30〜12:00】
P1. 11:30〜12:00

与那覇岳における自動撮影とその有用性について

   

*金城和三・宮城邦治(沖縄国際大学),伊澤雅子(琉大・理・海自).

P2. 11:30〜12:00 ケラマジカの好きな草調べ
    *中村光志・嵩原さちえ(座間味村立慶留間小学校),遠藤晃(佐賀大・農).
P3. 11:30〜12:00 ケラマジカの足跡について
    *糸嶺彩華・嵩原さちえ(座間味村立慶留間小学校),遠藤晃(佐賀大・農).
休憩(昼食)【12:00〜13:00】
沖縄生物学会総会(5号館1階107講義室)【13:00〜14:00】
一般講演(5号館1階107講義室)【14:00〜15:00】
11. 14:00〜14:15 沖縄島北部の砕波帯における稚仔魚調査
    *田端重夫(いであ梶j・武井直行(牛洋)・桜井雄(沖縄環境調査梶j.
12. 14:15〜14:30

八重山列島周辺海域で漁獲されるミンサーフエフキとアミフエフキの生物学的特徴

    *木曾克裕・加藤雅也・栗原健夫・小菅丈治(西海区水研石垣).
13. 14:30〜14:45 西表島浦内川マングローブ域におけるキバウミニナの産卵期と殻高組成
    *両角健太 (東海大・海洋),河野裕美 (東海大・沖縄地域研究センター),上野信平 (東海大・海洋).
14. 14:45〜15:00 屋我地島沖の小島に棲息するハトと周辺の海底から湧く気体について
    山城秀之(沖縄高専・生物資源).
公開シンポジウム(沖縄国際大学 7号館2階201講義室) 【15:30〜18:30】
「外来種法の盲点:見えない脅威と琉球列島の生物多様性」
代表:伊澤 雅子),琉球大学21世紀COEプログラム共催(入場無料)
1.  15:30〜16:30 五箇公一(国立環境研究所).
   見えない外来種問題-クワガタとダニを事例として-:総論・クワガタとダニ・外来種政策
2.  16:30〜17:00 高良淳司(沖縄県獣医師会).
   ツボカビの野外拡散を防ぐには
3.    17:30〜18:00 上地奈美(沖縄農研セ).
   農林害虫としての外来生物-デイゴヒメコバチの例を中心に-
4.  18:00〜18:30 総合討論

 外来種対策が自然保護・生物多様性保全の上での大きな課題として取りあげられるようになって久しい。人間の活動に伴ってある地域に、そこにもともとはいなかったはずの生物が入り込むとしばしば在来の生態系、生物相に深刻な撹乱をもたらすことが広く認識されるようになってきている。
外来種の在来種への影響に関する調査研究は,当初はその影響様式が、前者の後者に対する直接的な捕食や競合として捉えられる事例がもっぱら対象となった。しかし研究が進むにつれて、外来種の在来生態系・生物相への影響様式がはじめ考えられていたよりもはるかに多様で複雑であることがわかってきた.その一方でこのような外来種の問題への対応は、ひとたびことがおこってから対症療法的な対策を立てるよりも、あらかじめ立てられた科学的な予測にもとづき外来種の野外での定着を予防する方がはるかにリスクが低く、労力や経費の面でも合理的であることが認識されるようになった。このような考えにもとづき2004年には「外来生物法?特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」が施行されたのである。
この法律はたとえばやんばるでマングースやノネコの、あるいは石垣島や鳩間島でオオヒキガエルのコントロールを進める際に法的根拠を提供するなどして、一定の役割を果たしてきている。しかしその一方で、特に最近になってその存在や影響の大きさが認識されはじめた、目に見えない(あるいは見えにくい)外来生物の脅威に対してはほとんど無力であることが指摘されている。おもな理由は外来生物法がその規制対象を、肉眼で明瞭に認識できるものに限定していることにある。しかし現実には、たとえば対馬ではノネコからの感染を通してツシマヤマネコを絶滅に追いやりかねないFIVの問題が、小笠原諸島でも固有の陸棲貝類の強力な捕食者であるニューギニアヤリガタウズムシの問題が、火急の要対策課題となっている。そしてここ沖縄においても、見えない脅威は迫っている。
本シンポジウムではこのような肉眼でとらえられにくい外来生物が沖縄の生態系、生物相への脅威となっている現況や、有効な対策に関する議論を試みる。さらに現行の外来生物法の問題点や改善策についても考えてみたい。

懇親会(沖縄国際大学 厚生会館 4階ホール)【19:00〜21:00】

 シンポジウム終了後、構内の厚生会館4階ホールに移動し、ささやかな懇親会を予定しております。講演時間内に出来なかった討論や会員同士の親睦をより深めるため,是非ご参加下さい。

お知らせ
南西諸島エコリージョンにおける生物多様性評価プロジェクトへの参加協力のお願い
(WWFジャパン 自然保護室 南西諸島プログラム 安村茂樹・花輪伸一)

 WWFジャパンは1970年代初頭から南西諸島において、研究助成や普及啓発、政策提言などさまざまな保全活動に携わってきたが、自然環境を脅かす要因は近年、カエルツボカビ症や有害化学物質汚染、地球温暖化など多様化している。南西諸島の自然環境保全をより実効力の伴ったものにするには、立場の異なる利害関係者が情報を交換し、保全の将来像(ビジョン)を共有できる場を設ける必要があり、関係者それぞれの活動と連携した活動を効率よく展開していく必要がある。
この度、WWFジャパンでは南西諸島を包括的に捉え直し、生物多様性の観点から優先的に保全すべき地域、取り組むべき課題を利害関係者と共に抽出するプロジェクトに取り組むこととした。プロジェクトでは、その初期段階から研究者、地域の有識者、行政等の多様な利害関係者に参加を呼びかけている。優先保全地域は、GIS(地理情報システム)を活用し、関係者の知見を集約することで抽出する。関係者が優先保全地域抽出とその保全ビジョン策定の過程を共有することで、それぞれの役割を認識し、実効性の高い保全・管理計画が検討されるようになる。本大会においては、プロジェクトの概要、進捗状況を紹介する。多くの研究者に参加いただければ幸いである。(関連講演が一般講演10題目にあります)

連 絡 先

沖縄生物学会第43回大会準備委員会
〒903-0213 沖縄県中頭郡西原町千原1番地
琉球大学理学部海洋自然科学科生物系事務室内
佐藤 綾・須田彰一郎
okibio@w3.u-ryukyu.ac.jp
TEL(098)895-8577 FAX(098)985-8576

〒901-2701 沖縄県宜野湾市宜野湾2-6-1
沖縄国際大学
金城 和三
TEL (098)893-2519


沖縄生物学会役員一覧表

沖縄生物学会の会長,副会長,監査員および評議員が下記のように選出され,前回の総会で承認されました。任期は2006年5月13日から2008年5月の総会までです。

会   長 西平守孝(名桜大学)
副 会 長 日高道雄(琉球大学) 喜屋武一三六
(生物教育研究会会長)
会計監査員 稲福 弘(沖縄県総務部) 本原邦夫(元琉球大学)
  菊川 章(球陽高校)
評 議 員
大学関係 新垣裕治(名桜大学) 宮城邦治(沖縄国際大学)
  照屋建太(沖縄キリスト教短期大学)
研究機関 新垣則雄(農業試験場) 下地邦輝(県衛生環境研究所)
  宮良 工(財・沖縄県環境科学センター)
行政機関 当山昌直 (公文書館) 田中 聡(県立博物館)
高校関係 安座間安史(辺土名高校) 村上美穂子(首里東高校)
  神谷保江(元高校教諭)  
中学校関係 比嘉清文(嘉数中学校) 原戸鉄二郎(安慶田中学校)

 さらに以下の幹事,編集委員が会長によって委嘱されました。
庶務 須田彰一郎(琉球大学) 佐藤 綾(琉球大学)
  金城和三(沖縄国際大学)
会計 傳田哲郎(琉球大学) 玉城 歩(琉球大学)
編集幹事  本多正尚(琉球大学)  杉尾幸司(琉球大学)
編集委員 横田昌嗣(琉球大学) 太田英利(琉球大学)
  大瀧丈二(琉球大学) 今井秀行(琉球大学)


沖縄県生物学会賛助会員

本学会にご協力いただいている賛助会員は下記の通りです。

株式会社 猪原商会沖縄営業所  所長 安次嶺 学
      〒900 那覇市久米1丁目7番10号 (098)868-6373
株式会社 森山商事       代表取締役 森山紹政
      〒902 那覇市寄宮2丁目29番22号 (098)835-4056


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原稿募集のお知らせ *
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  沖縄生物学会誌の投稿原稿の校閲方法が変わりました。原稿は随時受け付け、直ちに査読を行います。従来のような受け付けの締め切り日はありません。ただし、第46号については、可能な限り会計年度である2008年3月31日までに発行したく考えています。印刷日程を考えますと、年度内発行は2007年12月中に原稿の審査が終わっていないと難しくなります。このあたり諸事情をご理解いただき、会員の方々の早めの投稿をお待ちしております。最新の投稿規定は第45号に掲載される予定です。

  原稿送付先:〒903-0213 沖縄県中頭郡西原町千原1
  琉球大学理学部海洋自然科学科生物系内
           沖縄生物学会編集委員会
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沖縄生物学会
〒903-0213 沖縄県中頭郡西原町千原1番地
          琉球大学理学部海洋自然科学科生物系内
          生物系事務室 TEL:(098)895-8577
          佐藤 綾(098)895-8555,須田彰一郎(098)895-8564,          FAX:(098)895-8576
       E-mail: okibio@w3.u-ryukyu.ac.jp
   ホームページ: http://w3.u-ryukyu.ac.jp/okibio/

     振替口座 郵便:02030-8-30433 沖縄生物学会
            銀行:琉球銀行宜野湾支店 普通051-065沖縄生物学会

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