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沖縄の立方クラゲ相に関する新知見
*岩永節子・大城直雅・松田聖子・盛根信也(沖縄県衛生環境研究所), 大場淳子(浦添市)


  ?立方クラゲ類はその刺胞毒の強さから刺症被害をもたらすものが多い。沖縄県で分布の記録がある立方クラゲ類は,ハブクラゲ,Carybdea sivickisi,アンドンクラゲの3種であり,特にハブクラゲによる刺症被害は大きな問題となっている。ハブクラゲによる被害を防止するための基礎研究として,灯火採集による季節消長調査やポリプの探索を行ってきたところ,これまで沖縄からは記録がないと考えられる立方クラゲが複数採集されたので報告する。
宜野湾市で行った灯火採集で得られた立方クラゲ類(以下水母)は5%ホルマリン海水で固定後,外部形態を既知の種と比較した。外部形態からCarybdea sp. と考えられた水母1個体と,宜野湾市と石垣島で採集された立方クラゲのポリプ12個体について,mtDNAの COT(cytochrome coxidase subunit I)領域の塩基配列を解析し,ハブクラゲやC. sivickisi,アンドンクラゲ(採集地:福岡県)と比較した。
 水母の標本は未成熟な個体が多かったため種の同定にはいたらなかったが,少なくともこれまで日本国内からは報告されていない種だと考えられた。COI領域中の505塩基を決定することができた。ポリプの塩基配列は4つのパターンに分けられたが,沖縄から報告のある立方クラゲの配列とは一致しなかった。Carybdea sp. と考えられた水母の外部形態は,アンドンクラゲに類似していたが,COIの塩基配列はアンドンクラゲとは19.8%異なっていた。
 これまで沖縄県では報告のなかった立方クラゲの存在が示唆されたことから,今後,研究が進むにつれ,その種数は増えるものと考えられる。