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ニガウリの蕾も加害するランツボミタマバエとそれに寄生するハラビロクロバチ科2種の発見
上地奈美(沖縄農研セ,日本学術振興会)


 ランツボミタマバエContarinia maculipennis(双翅目:タマバエ科)は東南アジアからの侵入害虫で,米国ハワイ州では,洋ランの一種であるデンファレ(ラン科)やニガウリ(ウリ科),ハイビスカス(アオイ科),プルメリア(キョウチクトウ科),トマト(ナス科),ジャスミン(モクセイ科),パクチョイ(アブラナ科)など7科にわたる植物の蕾を加害するという報告があり,タマバエ科では珍しい広食性である。沖縄県では,1989年に発見されて以降,デンファレで大きな被害を出している。2005年に沖縄島北部のニガウリ露地圃場でも,初めて本種が見つかった。そこで,2006年6〜10月にかけて,県内各地でニガウリの蕾を採集し,タマバエの分布状況を調査した結果,本島全域,石垣島,宮古島のニガウリ露地圃場でも,本種の発生を確認した。
また,デンファレおよびニガウリから採集したタマバエ成熟幼虫を,バーミキュライトとともに容器に入れて飼育したところ,内部寄生蜂が得られた。これらは,ハラビロクロバチ科のSynopeasに属する2種であることが判明した。ハラビロクロバチ科は卵―幼虫寄生性で,タマバエ類の卵や1齢幼虫の体内に産卵する内部寄生蜂として知られているが,ランツボミタマバエから得られたのは初めてである。寄主であるランツボミタマバエが侵入種であるため,寄生蜂の由来にはふた通り考えられる。ひとつは,ランツボミタマバエがデンファレの苗などとともに沖縄に持ち込まれた際,タマバエの体内に寄生した状態で寄生蜂も一緒に入ってきた可能性,もうひとつは,本来は他の昆虫に寄生していた在来種が,タマバエに寄主拡大あるいは寄主転換した,という可能性である。